ケーブル診断に役立つ測定器

ケーブル診断とは
ケーブル診断とは、電力、通信、ネットワークなどに用いられる各種ケーブルの健全性や性能をチェックする一連の試験・測定のことです。
ケーブルの故障(断線、短絡)を特定する目的や、経年劣化による事故を未然に防ぐ(予防保全)目的で行われます。
診断の主な目的(種類別)
診断の対象となるケーブルの種類によって、その目的と測定方法が大きく異なります。
- 1. 電力ケーブル(高圧・低圧):
経年劣化や敷設環境による絶縁体(特にCVケーブルの水トリー劣化など)の劣化状態を把握し、重大な地絡・短絡事故を未然に防止することが主目的です。
主な診断項目: 絶縁抵抗値、絶縁劣化度(直流漏れ電流、誘電正接 など)、シース(外被)の健全性、事故点の標定。
重要な技術: 運転を停止せずに診断できる活線劣化診断が特に求められます。 - 2. ネットワークケーブル(LANケーブルなど):
通信が可能な状態であるか、通信速度の規格を満たしているかを確認することが主目的です。
主な診断項目: 導通(ワイヤマップ)、断線・ショートの有無、障害点までの距離(TDR)、規格(Cat5e, Cat6など)に応じた通信性能(ノイズ、減衰)の認証。 - 3. 光ファイバーケーブル:
光信号の減衰(損失)や、ケーブルの断線位置を特定することが主目的です。
主な診断項目: 光損失(減衰量)、断線・接続不良の位置(OTDR)、コネクタ端面の状態。
診断の重要性
ケーブルは設備やインフラの「血管」であり、目視での点検が困難な箇所に敷設されていることが多いため、定期的な診断が不可欠です。
- 事故の防止:
特に電力ケーブルでは、劣化による絶縁破壊事故は大規模な停電や火災につながるため、診断による早期発見が重要です。 - 予防保全への移行:
ケーブルの健全性を数値で管理することで、故障が発生してから対応する「事後保全」ではなく、交換が必要な時期を予測して対応する「予知保全」が可能になります。
ケーブル診断に役立つ測定器
ケーブル診断に役立つ測定器は、診断の目的とケーブルの種類によって大きく分類されます。
特に重要で代表的な測定器は、以下の通りです。
1. ネットワーク(LAN)ケーブル診断用測定器
主に通信の導通、結線状況、性能規格への適合性を確認します。
- LANケーブルテスター / チェッカー:
導通(ワイヤマップ)、断線、ショート、結線ミスの有無、ケーブルの長さ(簡易的)を測定します。
親機と子機に分かれるタイプが多く、比較的安価で簡易診断に使われます。 - ケーブルアナライザー (認証テスター):
LANケーブルが Cat5e、Cat6、Cat6Aなどの規格(認証)を満たしているか(減衰、クロストーク、ノイズなど)を詳細に測定し、「PASS/FAIL」判定を出します。
高度な通信性能の保証が必要なプロの施工・管理に使われます。 - TDR (Time Domain Reflectometer):
電気パルスを送信し、反射波を分析することで、断線やショートが発生している正確な位置(距離)を特定します。
アナライザーに機能が内蔵されていることが多いです。
2. 光ファイバーケーブル診断用測定器
主に光信号の損失、断線や接続不良の位置を特定します。
- OTDR (Optical Time-Domain Reflectometer):
光パルスを送信し、反射や散乱を解析することで、ケーブル長全体にわたる損失や、断線、融着不良などの障害点までの正確な距離を測定します。
光ファイバーの故障箇所特定に最も重要な測定器です。 - 光パワーメーター + 光源:
ケーブルを通る光信号の減衰量(損失)を測定し、接続点でのロスが規定値内にあるかを確認します。
パワーメーター(受光)と光源(送光)をセットで使用します。 - ファイバーチェッカー (VFL: Visible Fault Locator):
赤色の可視光レーザーを送り込み、断線箇所やコネクタ不良から光が漏れるのを目視で確認します。
簡易的な導通確認や断線箇所の特定に使われます。
3. 電力ケーブル診断用測定器
主に絶縁体の劣化状態を診断し、事故を予防します。
- 絶縁抵抗計 (メガー):
ケーブルの絶縁抵抗値を測定します。
設備停止(停電)時の診断の基本です。低圧・高圧用があります。 - 活線絶縁診断装置:
運転中(活線状態)の高圧CVケーブルの絶縁劣化度やシース絶縁抵抗を測定します。
停電が困難な重要な設備で、予防保全のために使用されます(例:タンデルタ法、直流重畳法)。 - 部分放電測定器 (PD測定器):
ケーブルの絶縁破壊の初期症状である部分放電を検知し、劣化の進行を監視します。
活線状態で測定可能で、劣化傾向のトレンド管理に重要です。 - ケーブル事故点測定器:
地絡や短絡事故が発生した際、故障が発生した正確な位置を測定・標定します。
パルスレーダー法やブリッジ法など、複数の原理を利用する装置があります。
ケーブル診断にお勧めの測定器
主な測定機器は以下になります。
- メタルケーブルの断線、短絡、および測長に: 「TDRケーブル診断・測長機 TX-2003」など。
- メタルケーブルの障害点までの距離特定と測長に: 「高性能TDRケーブル測長機 TV220EX」など。
- 低圧・高圧の電力ケーブルにおける地絡(アースへの漏電)や短絡(ショート)などの事故点(故障箇所)の特定に: 「ケーブル障害探索機GFL3000」など。
- メタルケーブル(電力線、通信線、LAN線など)の断線や短絡などの障害箇所を特定し、ケーブル長を測定: 「TDRケーブル診断・測長機 TXレンジャーS」など。
- メタルケーブル(電力線、通信線、LAN線など)の物理的な障害箇所特定と測長に: 「TDRケーブル診断・測長機 TX6000S」など。
まとめ
重大事故の予防と安全性確保、設備の安定稼働と信頼性向上、コスト削減と効率的な設備管理 等、ケーブル診断の重要性は、主にこの3つの観点から非常に高くなっています。





